陶芸家 今井完眞: 穴窯を焚く
こんにちは、今井です。草や木の緑が濃くなってだんだん夏に近づいてきた気がします。最近雨が多くて作品が乾かず制作のスピードが遅くなっています。洗濯物を干すタイミングも難しいですね。今回は4月21日から26日まで穴窯を焚いていましたのでそのお話をさせていただきます。
私の家は父と祖父も陶芸家です。祖父は昔ながらの穴窯での作品焼成にこだわっていて30年以上前から春と秋の年二回家族で穴窯焚きをしています。私も小学生の時から薪割りなどの手伝いをしていて大学に入ってからは自分の作品も窯に入れて焼いています。
作品ができて施釉が終わったらまずは窯詰めです。穴窯は山の傾斜を利用して作られていて斜面の一番下の部分が焚き口になっています。窯の入り口はその焚き口のところになっていますので一番奥から作品を詰めていき最後に焚き口のところに作品を詰めます。焚き口に近いほど炎が近くて温度が高くなりますので窯の奥の部分には耐火度の低い作品から詰めて焚き口に近くなるにつれて高火度焼成の作品を詰めます。およそ4日間かけてこの作業を行い作品が詰め終わったら窯の入り口にレンガを積んで穴を小さくして焚き口部分だけ開けておきます。それから窯内の水分を減らすために1~2日間灯油のバーナーであぶります。
火入れの日は窯の前に鯛やお酒などお供え物をして窯焚きの安全と良い作品が焼けるようにお祈りします。ここから昼も夜も交代で窯の世話をして100時間かけてゆっくり900度まで温度を上げていきます。900度まで温度が上がったらくべる薪の量を増やしてここから還元をかけていきます。窯の中が酸化か還元かで作品の焼け方が大きく変わります。そして還元状態を保ちつつ温度を上げていき焚き口に近いところが1300度を超えて作品が十分焼けると今度は窯の側面からも細く割った薪をくべて窯の中央の温度を上げます。最後に奥の部分の温度を上げて窯変を出すために塩と炭を入れ約6時間薪をくべながら徐冷し完全に焼成が終わると焚き口もレンガで塞いで土をかけすべての穴を閉めます。
こうして2週間ゆっくりと温度を下げて人が窯の中に入っても大丈夫な40度以下になってから窯出しをします。
今回は窯詰めの時に火の通り道を広くしたため温度の上りがよくしっかりと焼けていて良い作品が多かったです。志野もよく透光性のある信楽透土もきれいに光を通しています。
今回とれた作品は5月21日から開催した銀座黒田陶苑での二回目の個展にも出品しました。また秋の展覧会にも出品予定です。
*今井完眞の作品は https://mizenka.com/ja/artist/Sadamasa-Imai でご高覧いただけます。
*Sadamasa Imai’s artworks can be seen at https://mizenka.com/en/artist/Sadamasa-Imai
一番下の2つの画像以外の画像:今井完眞撮影 穴窯を焚いている風景

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